本を捨てずに町に出かけたら written by 谷亜由子

「本が好き」とか「読書が趣味」だと言うと〝利口でもないのに賢ぶってる人〟に見られることが増えたような気がします。先日、ある友人とホテルのラウンジで待ち合わせをし、少し早めに着いた私はいつものように本を読んで待っていました。こういう時間が案外至福だったりするのです。

さて、そこへ遅れて現れた彼女。私を見るなり「本を読んで待つ人って今でもいるのね!」と驚き、おまけに「スマホより賢そうに見えるもんね」と言われてしまいました。これが子供だったら「まあ、本を読んでいたの?偉い子ね」と素直に褒められたのかもしれないけれど、今時、いい大人が人目に触れる場所で本を読むなんて、これ見よがしに賢い人を気取るファッションのように映るのでしょうか。

私にとって読書はみんながハマっているスマホゲームと同じもの。単なる娯楽に過ぎません。いまやスマホでも読書はできる時代だというのに紙の「本」にこだわるのも、手に馴染んだ感触が心地よく、その安心感からいつまでも抜け出せずにいるだけのこと。それでももしも私が本当に賢い人であったなら、本を小脇に携えている姿を見て「さすが、優秀な人は違いますね!」と一目置かれたのかもしれません。私の場合、残念ながら「本=賢い人」のイメージに中身が伴っていないばかりにこの言われよう。うっかり「読書が好き」だなんて言わない方が無難かなと感じる出来事でした。