「ちょっとマニアック」、ここでのマニアックとはどのように考えればよいのだろうか?
60年前の英和辞典(我が家にはこれしかない)で調べると、そこにはmaniac=「形容詞、狂乱の、狂気の」とある。
弱りましたね、書こうとする内容ではタイトルにそぐわないかも・・・どうするかな・・・
ならば広辞苑には?「一つのことに常軌を逸するほど熱中しているさま」とある。
最新と考えられるネットでは?weblioには真っ先に「狂気の」「狂乱の」また名詞として「狂人」。口語では「熱中者」とある。
goo辞書、コトバンクの精選版 日本国語大辞典、デジタル大辞泉では?概ね共通の意味で「ある事に極端に熱中しているさま」、
類語例の中に「こだわり」「こだわる」とある・・・なんとか妥協点が見つかった。
僕は主に放送作家として活動。ありがたいことにテレビ番組の構成と演出(ディレクター)で50年を超えた。
さて、時は1991年(平成3年)4月、名古屋市熱田区に「白鳥庭園」が完成。
開園と庭園の魅力を広く周知するための広報番組制作の仕事を受けた。VTRの15分番組(放送は東海テレビ)。
名古屋に縁のある出演者の1人としてお願いしたのは中日ドラゴンズで投手として活躍した鈴木孝政さん。
現役を引退(1989年)して間がない彼に、「白鳥庭園を訪れて何を感じるか」を語ってもらった。
ほかに環境衛生学の女性教授と画家の大学教授に出演してもらったが、ここでは鈴木さんの「こだわり」を伝えたいので他のお二人のことは割愛。
聞き手は草柳文恵(故人)さん。
撮影の日は、青空が美しい穏やかな春。鈴木さんの第一声は、「心地いい風を感じる」だった。
なるほど、現役時代、ほんの二年ほど前まで、試合がある日は風に神経を尖らせていたにちがいない、
向かい風か追い風か、強いか弱いか、右からか左からか斜めからか、はたまたぐるぐる回るか。
「風」とひと言でいっても、どんな風かは球場によっても違うだろうし、季節、天候によっても違うだろう。
一球ごとに、「極端に熱中して風を意識しながらの投球」は、さぞ神経を消耗させたことだろう。
神経を研ぎ澄ましていなければならなかった身から解放された鈴木さんが、この日、白鳥庭園の風を「心地よい」と感じたのは、長年投手として活躍してきた人の、真に「風に対して常軌を逸するほど熱中してきた男」ならではの心だと、共感するとともに出演を依頼して良かったと嬉しかった。
その後、鈴木さんとは仕事での接点はないし、個人的な付き合いもない、しかし30年以上経っても未だに僕の記憶に残っている「ことば」の一つだ。
今も鈴木さんは日常生活の中で風を感じながら生活しているのではないかと、勝手に僕は思っている。
有難いことに仕事柄、鈴木さんに限らず大勢の人にお目にかかり、話していただく機会に恵まれ、心に残っている「ことば」が幾つかある。
今、あなたの心に残っているのは、どんな「ことば」ですか?
(はっとり ちはる)