【ラジオドラマ放送】 FMシアター「家族を因数分解」

9月16日(土)午後10時~午後10時50分(全1回)
作:伊佐治弥生 演出:佐藤譲
★「らじるらじる」(無料)で「聴き逃し」配信あり(9月23日午後10時50分配信終了)

石田奏(中島セナ)は高校1年生。幼い時に母を亡くし、祖母(市毛良枝)の手で育てられた。その後、父親(田中美央)が再婚、栞(前多唯花)という妹も生まれて5人家族となった。しかし、NGO職員の父は日本におらず、継母(田丸麻紀)は仕事が忙しいところにもってきて、祖母が骨折。幼い妹の世話や家事が一気に奏の肩にかかり、付き合い始めたばかりの彼(染谷隼生)ともぎくしゃくしだす…。

というようなホームコメディです。もう少し詳しい情報は、NHKのFMシアターのサイトに掲載されています。また、「月刊ドラマ」10月号の「ライター掲示板」に、執筆の苦労なども書かせてもらったので、よければチェックしてください。

【本読み終了後のスタジオ】

今回は、収録現場リポートをします。

ラジオドラマは通常、本読み半日、収録に一日をかけ、大抵は順録り(台本の最初から順番に収録)してゆきます。作家の立ち合いはマストではないのですが、私は現場が好きで、立ち合わせてもらいます。特にすることはありません。ただ、役者さんがどんどん変わっていくのが楽しい。今回、田中美央さんがいみじくも言ってくださったように、「的確な演出!」を見に行くのです。
田中さんは実力派として定評のある方ですが、ラジオドラマはなぜか初体験とのことで、「ラジオドラマは演劇に近いんですね」「こういう(なんということのない)話が演りたかったんです」「もっとラジオドラマが演りたい!」と、目をキラキラさせて話してくれました。
佐藤譲ディレクターとは、30年以上のお付き合いで、自他共に認めるコンビなのですが、彼の脚本を読む力と、端的な言葉による演出は、もはや「芸」、あるいは「マジック」の領域。
今回も、中島セナさんが、もちろんご本人の潜在能力もあるのでしょうが、本読みの3時間の間にみるみる表現力をあげ、収録にいたっては、完璧の領域。付き合い初めの彼氏とのシーンでは、副調整室で、おじさんおばさんが、「いやぁ、恥ずかしいなぁ」、「青春っていいなぁ」と、勝手にもじもじする始末。
準主役の市毛良枝さんは、安定感があり、副調で「やっぱ上手いなぁ」と声が漏れるほど。今回、名古屋のばぁばとして登場する小島範子さんもラジオドラマ熟練者なので、このお二人は、何も言わなくても、ご自分で「オン」と「オフ」(その場から遠ざかったり、遠くから声をかけたりする場合、「オフへ」「オフから」と台本に表記します)を切り替えるという職人技さえ披露。
小学校1年生の前多唯花ちゃんは、収録の計8時間以上もの間、時々廊下を走ったりスキップしたりして遊びながらも、最後まで集中力を維持。継母役の田丸麻紀さんは、リアルでも2児のお母さん。個性的なのに、ナチュラルなお母さんにしてくれました。
これで全員かな?
あ、忘れてた。彼氏役の染谷隼生君! 大物の予感しかしません。なんでも所属事務所の激推しだったとかの中学3年生。演出が指示すると「あ、わかりました」とサラリと即答。「ほんとにわかってるのか?」と疑うほどなのに、なぜか、ほんとに理解して、演技を変えてくる。礼儀正しく、素直、自然体が新鮮な少年。大成するかな?

ラジトドラマっていいなぁ、と改めて思った二日間でした。

「栞役、本当は小学3年生辺りにお願いするつもりだったんだけど、(作中の)作文でオーディションしたら、リアル小学1年生には勝てないんだよね。演出するのは大変だけど」「ポカリスエットのCMの最後の一声を聞いて、この人に!と思ったんです。あれ、セナさんの声ですよね? よかったぁ、違っていたら、どうしようかと思った!」と言っていた、いつも、自分で自分のクビを締める譲さん、お疲れさまでした。編集、頑張ってね! 私は何度も「ホンは長いと思うよ」って言ったよね。でも、「いや、不安なので、もっと足して」と言うから足したけど、やっぱ、長かったよね。断腸の思いで、頑張って、切ってください。応援しています(笑)

(伊佐治弥生)