亡くなっても日本で人気がある女優オードリー・ヘップバーンの主演映画『ティファニーで朝食を』(1961年/脚色:ジョージ・アクセルロッド/監督:ブレック・エドワーズ)。
ホリー(ヘップバーン)の暮らすアパートの住人に日本人の写真芸術家が出てくる。出っ歯で眼鏡をかけ、寝間着姿だ。ヘップバーンのオブラートに包まれているが、今見ると差別的で違和感を感じる。その日本人役ユニオシを演じているのは、ミッキー・ルーニー。ミッキー・ルーニーは、子役でMGMに入り10代で『アンディ・ハーディ』シリーズが9本製作され、1939年から41年まで3年連続でマネー・メーキングスター1位に輝き、1938年(第11回)アカデミー賞の特別賞(子役演技)、1982年(第55回)アカデミー賞の名誉賞(五十年に及ぶ記憶すべきヴァラエティに富んだ映画演技の多様さに対して)を受賞している。21歳の頃、まだ売れない新人のエヴァ・ガードナーを手始めに8度の結婚歴。そのミッキー・ルーニーがなぜ日本人もどきの役をと疑問に思うが、スターシステムの撮影所で子役から青年そして大人へとハリウッドを生き抜いた俳優の役者魂を感じる。それにしてもあの日本人はいけません。
『風と共に去りぬ』(1939年/脚色:シドニー・ハワード/監督:ヴィクター・フレミング)。
黒人奴隷役で、スカーレットに付き添う乳母役のマミーを演じたハティ・マクダニエルは、同じ映画でノミネートされたオリビア・デ・ハビランド等の白人を抑えて助演女優賞を獲得した。奴隷ビック・サム役のエベット・ブラウンもスカーレットとのやり取りで特に差別を感じさせる演出ではなかった。大作のため興行収入を考慮した演出だったか?
太平洋戦争の初期段階で、アメリカ軍が退却したフィリッピンに残されていたアメリカ映画(『風と共に去りぬ』『ファンタジア』など)を見た日本映画関係者は、この戦争は勝てないと思ったと戦後発言している。54年前、名宝シネマで見た時のスタンダード・サイズのテクニカラーの驚きは忘れられない。園遊会のシーンでスカーレットを囲む若者の中に、1950年代のアメリカのテレビ『スーパーマン』でスーパーマンとクラーク・ケントを演じたジョージ・リーブスが数秒映ります。
『悲しみは空の彼方に』(1959年/監督:ダグラス・サーク)。
舞台女優で女児と暮らす母親と、白人を父親に持つ女児を育てている黒人の母親が、ふとしたことで知り合い協力して生きていく話である。舞台女優はラナ・ターナー、女児は成長してサンドラ・ディー、黒人メイドはファニタ・ムーア、白人に見える娘はスーザン・コーナーが演じている。監督はデンマーク生まれ、ドイツで映画の道に入りナチスを嫌って渡米した経歴から黒人への偏見がなく、主演のラナ・ターナー親子よりも黒人親子のほうに演出の冴えが見える。黒人親子を演じた二人は受賞を逃したものの、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。ラストの亡くなった黒人メイドの葬儀は圧巻である。
何年か前に『白いカラス(邦題)』(2004年/脚色:ニコラス・マイヤー/監督:ロバート・ベントン)という、黒人の血が少し入っている主人公の映画がありました。
(加藤満男)
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