こんな毒 vol.2

 2011年3月11日の東日本大震災から五年後に封切られた『君の名は。』と『シン・ゴジラ』は大震災の影響がある。

『君の名は。』(脚本・監督:新海 誠)。隕石の衝突で町が消え去り、時空を超えて見えぬ相手とふれあい、いつしか出会い名前を聞く。大震災で一瞬のうちに近しい人が消えてしまった心の傷を癒すように爽やかに描かれている。深く心に残る。障子がスライドする、電車のドアーがスライドする描写がよく出てくる。確か、十年以上前だと思うがアメリカ映画に『スライディング・ドア』という二通りの結末を描いた映画があったと記憶しているが、新海監督はご存知だっただろうか? 8月末の公開第一週目は新海ファンで座席の6割程度だったが、二か月後はとんでもない事になっていた。大ヒットロングランである。

『シン・ゴジラ』(脚本:庵野秀明/監督:庵野秀明・樋口真嗣)。大震災で発生した福島第一原発事故を想起させる話である。怪獣に近代兵器で対処するために、日本政府が憲法や関連法に苦慮する今日的な問題が描かれている。化学兵器で何とか怪獣を停止させるが、東京駅の前で停止したまま原子炉となってしまう。その後始末の余韻を残して映画は終わる。

 2022年に公開された『大怪獣のあとしまつ』(脚本・監督:三木 聡)は、選ばれた者が怪獣の死体を持ち上げて空高く去ってゆく。原発事故の後始末は100年以上掛かります?

 東日本大震災より62年前に同じ題名の映画が封切られて大ヒットしていた。1954(昭和29)年、終戦から9年たって封切られた。『君の名は・第三部』(脚色:柳井隆雄/監督:大庭英雄)。前年に第一部・第二部封切り。
 終戦も近い頃、数寄屋橋で知り合い、折からの空襲警報で一年後の再会を約束して名も告げず別れる後宮春樹(佐田啓二)と氏家真知子(岸 惠子)。その後、再会と別れを繰り返し第一部から第三部まで続く大ヒットメロドラマ。“女湯が空になる”というNHKの連続ラジオドラマの影響もあるが、全国に舞台を広げ戦後の復興の様子や焼け跡から立ち上がる人々も描かれている、大衆に力を与えたのではないでしょうか?

『ゴジラ』(脚本:村田武雄・本多猪四郎/監督:本多猪四郎)。戦争と、広島・長崎の被爆、第五福竜丸の被爆を踏まえた怪獣映画。怪獣から逃げるエキストラも、機銃掃射や焼夷弾から逃げ惑った経験からか、30年代の怪獣映画よりも迫力がある逃げ方である。逃げ遅れた母親が二人の子供を庇い「これから、お父ちゃんの所へ行くのよ」と戦争未亡人のセリフも入れ、ゴジラが東京を襲撃するシーンは東京大空襲や地方都市の空襲を連想させる。被爆被害生物でもあるゴジラは、芹沢博士(平田昭彦)の発明した“オキシデントデストロイヤー″で骨になって海水で冷却されて静かに眠りにつく。

 これから公開される『オッペンハイマー』を注視したい。

(加藤満男)