日本を伝える

外国人から「日本はどんな国?」と聞かれたら、何をどのように答えようと考えたことはありますか?
日本が地球のどこに位置するか、から始めますか、国土の広さから始めますか……
漠然とした質問に対して的確に答えることは難しい、「相手が何を聞きたいか」によるでしょう。

数十年前、仕事で高円宮殿下の講演を拝聴する機会に恵まれた。テーマは「文化交流」。留学中(カナダ クイーンズ大学)の体験談を交えて語られた。

文化交流とはブリタニカ国際大百科事典には『(一部抜粋)一般には、異文化間の相互理解を深めるための諸活動をさす。政府機関レベルの活動と民間レベルの活動とがあり、人物交流、留学生交換、各国文化の相互理解を深めるための学校教育、社会教育計画の立案、実践のほか芸術、芸能の交流などが含まれる。』とある。

高円宮殿下の講演に話を戻そう、
殿下は「留学のはじめ頃、友人らと外国語で話せることで満足していたが、『歌舞伎のことを教えてほしい』と求められた折に、大切なことは外国語で会話ができることではなく海外の人たちに日本を伝えることができてこそ文化交流だと気づかされた。」というようなことをおっしゃった。歌舞伎について自身が及第点を付けられるだけの説明ができなかったと自省されての言葉だと推察し、敬服したことを未だに強く記憶している。

では日本をどのように伝えるか。歌舞伎、日舞、相撲、箏や太鼓、祭など見てもらえば解るものは数多くあるが、その心を伝えることは難しい。日本の大手建設会社からアメリカ、ヨーロッパ、サウジに東南アジアなど、海外へ建設現場の責任者として赴き多くの外国人と接した人から、「宗教を尋ねられて無宗教だと答えたら、不思議がられた。」と聞いた。精神世界のことを説明し理解してもらうことは至難のわざだが、僕らが映画やテレビドラマで、アメリカをはじめとする諸外国の文化の一端を知ったように、日本の映画やテレビドラマ、アニメ、マンガなどで日本を伝えることはできると僕は考えている。日本語を話す外国人が、マンガやテレビアニメで日本語を覚えたと、テレビのインタビューに答えているのを見た人も多いでしょう。映像作品には言葉だけでなく日本人の考え方なども伝える力があるのではないかと僕は期待している。韓国のテレビドラマを見ていると、歴史ドラマでは王朝の権力争いや中国との関係。現代ドラマでは財閥と一般庶民との関係が描かれていて、考え方の根底が垣間見えるようで面白い。

近年、小学校でも英語授業が始められた。英語耳を持たない僕からすると、うらやましい限りで、多言語で会話できる機会が提供されることは素晴らしいと思う。未来を担う子供たちには、是非とも外国語を存分に操って世界の人々に「日本」を伝えてほしいと願う。

(はっとりちはる)