【ラジオドラマの書き方 第4回】 書式/柱とト書き

 今回はラジオドラマの書式について、書こうと思います。

 これまで映像ドラマの脚本を書いたことがある人でも、いざラジオドラマを書いてみようと思った時に、「でも一体、どんなふうに原稿用紙に書いたらいいんだろう?」と、悩む人は多いと思います。

 「第3回 ラジオドラマの効果音」の項で書いたように、映像ドラマと違って、ラジオドラマは音声のみで構成されています。「効果音」と「セリフ」(モノローグ、ナレーションを含む)、そして「音楽」のみで成り立っているドラマです。

 ですので、原稿用紙に書くのも、「効果音」と「セリフ」のみです。「音楽」は、どうしてもその楽曲でないと物語が成り立たないという場合を除いて、曲名を指定する必要はありません。

 書き方ですが、「効果音」は、映像ドラマのト書きのように、上から三マス程度空けて書きます。セリフもまた、映像ドラマと同じく一番上から人物名を書き、二行目以降は一マス程度下げて書きます。この際、先ほど述べたモノローグは「○○M」(○○は人物名)と書き、ナレーションは「N」または「ナレ」と書くこともあります。

 映像ドラマを書いたことがある人なら、ここまで読んで、「あれ? それなら『柱』は書かないの?」と、不思議に思うのではないでしょうか?

 一般的に言って、映像ドラマにおいてシーンを割る役割を果たす「柱」は、ラジオドラマでは書きません。シーンは効果音(または音楽)で作ります。例えば市バスに乗っているシーン。主人公が名古屋の繁華街、栄で降りて母親と会うという設定です。

 それでは、映像ドラマとラジオドラマの違いを具体的に見ていきましょう。

 このシーンを、一度目を閉じて、頭の中で音声のみで再現してみてください。音声のみで説明しようとすると、まず市バスの車内の音が必要なことがわかると思います。バスの走行音、乗客の話し声……。そのような音をつけることで、映像での柱にあたる「市バスの車内」は描けるのです。出だしはこうなります。

 特に指定したい音がない限り、こう書いておくと、現場でそのストーリーに合った状況の音をつけてくれます。

 次に、柱に続くト書の再現を頭の中でしてみてください。美咲のスマホの着信音が聞こえてくると思います。これは効果音ですので、そのまま書きます。ラジオドラマの効果音はこのように、映像ドラマのト書きの役割も果たします。

 そして加えるならもう一つ、窓の外に栄の街なみが流れていく、という視覚的な表現ですが、これは音声では伝えられません。その場合もラジオドラマでは効果音やセリフなど音声表現として表記します。

 以上のことを踏まえて、映像ドラマをラジオドラマに書き起こすと、このようになります。

 効果音とセリフの間は一行空いていますね。ラジオドラマの脚本は、このように書きます。ラジオドラマの収録現場では、役者さんが台本を読みながらセリフを収録するので、その時に見やすいためかな? と思います。(もしかしたら他に理由があるかもですが)

 ここまでで、基本的なラジオドラマの書式はおわかりいただけたと思います。一度、目を閉じて、周囲の音に耳をすませてみてください。全てを音声で表現するということが大事です。Let’s try!!

(西村有加)