【ラジオドラマの書き方 第7回】 登場人物名とタイトル名

 さてさて、今回はラジオドラマにおける、登場人物の名前のつけ方と、タイトルのつけ方について書いてみたいと思います。
 ラジオドラマに限らず、自分の作品を書く際に、あれこれと思いを巡らせながら登場人物の名前を考えるという作業は、とても楽しいものではないでしょうか?
 私もその昔、勝ち気な女子競艇選手に「凛」と名付けたり、猪突猛進に事件に突っ込んで行く事件記者に「猪熊」と名付けたりしました。そのように、登場人物の名前はある程度、その人物のキャラクターを反映したものになりがちですが、また反対に、とても内気な男の子なのに「虎次郎」なんて名前も、そこに葛藤が垣間見られるようで面白いですよね。 

 しかしラジオドラマにおいては、この名前のつけ方、映像ドラマよりも気を遣わなくてはなりません。
 例えば泰子と妙子。漢字を見た限りでは、まったく字面が違うので、原稿用紙上で見てみると違和感はないかもしれませんが、発音すると「たいこ」と「たえこ」。耳で聴いてみると、ほとんど同じに聞こえます。これではリスナーが混乱します。

 先ほどの例は極端な例でしたが、他には、主要人物二人の名前が「まさき」と「まこと」。どちらも同じ「ま」の音から始まる名前です。主要人物だけに、作品中で頻繁に呼び合わせることを考えると、どちらも同じ音で始まる名前は、避けた方が無難です。このように、ラジオドラマにおいての名前のつけ方は、登場人物の顔が見えないぶん、映像ドラマよりも気を遣ったほうがいいでしょう。

 同じことがタイトル名にも言えます。一回耳で聞いてみて、意味が捉えにくいタイトルは避けた方がいいでしょう。
 私がその昔、書いたラジオドラマに「know〜知っている」というタイトルのSF作品がありました。これは脚色作品で、原作本は野崎まどさんとおっしゃる、新進気鋭のSF作家さんの「know」という本でした。
 内容はネタバレになるのであまり書けないのですが、作品には「脳」が大きく関わっているのです。その「脳」と、知っているという意味の「know」の二つの意味を持つ「のう」なのですが、原作通りにラジオドラマで「know」とだけ言ってしまうと、リスナーからすると「know」なのか「脳」なのか、はたまた「NO」か「能」かなんなのか、さっぱりわからないことでしょう。そこで演出家さんと相談して、「know」の後に「〜知っている」とつけ、「know〜知っている」というタイトルになったというわけです。
 原作本のファンからすれば、「変なものつけて、ダサいタイトルにしやがって」など、不満はあるかもしれませんが、ラジオドラマにはラジオドラマならではのそういった事情もあるのです。
 それからタイトルについて言えば、あまり長過ぎるものや、聞いた時に思わず考え込んでしまうような難解なものは、特別な意図がない限り、避けた方が無難です。

 余談ではありますが、先ほど名前とキャラクターの話がでましたので、キャラクターの造形方法について、私の場合を書かせていただきたいと思います。
 私の中で既に立体的に出来上がって、動いてさえいるキャラクターは、名前がすんなり決まります。先ほどの「凛」や「猪熊」がそうです。
 それで今回、改めて名前とキャラクターの関係を考えてみたのですが、名前を先につける場合は、自分の中でキャラクターが完全に出来上がっていないことが多いように思います。
 「おとなしくて言いたいことも言えない女の子……? 文恵? とか?」(全国の文恵さん、すみません)
 私自身は対照的に、言いたい事はなんでも言い過ぎるくらい言うタイプなので、そういう場合は名前から想像を膨らませていって、まだぼんやりとした存在のキャラクターを、立体的にしようと考えます。自分自身から遠いタイプのキャラクターを作る時ほど苦労します。
 最近では、これもおとなしい引きこもりの、でも数学の大天才の男子中学生というキャラクターを主人公として作らなければならず、とても難しかったです。オリジナルの企画だったので、キャラクターのこういう感情を描きたい、という核の部分というべきものはもちろんあります。だからなんとなくのキャラクター像も持っています。けれども、そのキャラクター像を、立体的に肉付していく過程に苦労しました。
 ディレクターさんから提案されたのは、男子中学生という普段接することのない人種、その上、数学の大天才。対して私は、私大文系卒の数学アレルギー。「キャラがさっぱり掴めない!」と叫びたくなったのですが、そうも言ってはいられません。まずは名前を決めました。賢そうでクールな名前です。もちろん、履歴書的なものも作ります。小学生の時にこんなことがあった、あんなものが好きだったなど、作品に関係ないエピソードを考えたりもします。漫画や本を頼ったりもします。キャラクターが身を置いている世界に関連する漫画を読んだり、小説を読んだりしながら、そのキャラクターの世界に自分を馴染ませ、浸していきます。そんな中で、キャラクターの心情に思いを馳せます。そうこうしているうちに、そのキャラクターが喋り出し、動き出したら成功です。書くうちにそのキャラクターが愛おしくて仕方がなくなれば、作品はいいものになると思います。

 余談が長くなりましたが、ラジオドラマは耳から聴くドラマであるということを、いつも念頭に置いて書かれるといいと思います。

                             (西村 有加)